スワインジェネティクス株式会社

海外から原種豚を輸入し、繁殖の能力、肉質、強健性などを改良し、日本向けの高品質な種豚及び豚精液を提供致している会社です。

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ニュース

徹底した飼料コスト管理に一役 

飼料タンク計量システム「BINTRAC」の概要

スワインジェネティクス㈱
代表取締役社長 山内義広

難しいタンク内飼料残量の把握

TPPによる外圧や飼料原料の高騰など、昨今は畜産業界にとって厳しいニュースしかないと言っても良い。特に目下8ドル/ブッシェル絡みで推移するトウモロコシの価格には誰もが戦々恐々としているに違いない。もはや昔のような2ドル代に戻ることはなく、当面は7ドル以上で高止まりを続けるというのが一般的な見解だ。

このような中で生き残っていくためには、生産成績アップ、売り上げアップなどに取り組んでいかなければならないが、これらは一朝一夕にできることではない。不安定な相場に頼って生産を行っている以上、何より先に検討すべきは生産コストの圧縮だろう。なかでも、一番に手をつけなければならないのは生産コストの6割を占める飼料費である。

従来農場では、飼料メーカーが発行する納品書を頼りに自農場の飼料消費量を把握してきた。自農場のトラックスケールを使って、バルク車の出入り時に計量を行っている農場もあるが、まだごく一部に過ぎない。

また、月末に棚卸をする場合もタンク内の残量を目視で確認するのが一般的である。しかしこれには2つの落とし穴がある。1つはタンク内では飼料が消費されるにつれ、真ん中がへこんですり鉢状になるが、タンク外から確認できるのは壁面の残量であるため、実際よりも多く見積もることになる点である。より詳細に測量するにはタンク上に登り、ロープを使って測る方法もあるが、足場が不安定なところで両手を使った作業となるため事故が起きやすい。

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もう1つは、飼料は重量が同じでもロットごとに比重が異なるため、見た目だけではその時々の重量を正確に把握できないことだ。これらを回避するには、毎回飼料の比重を確認する必要があるが、現場作業としては煩雑で実際に実施している農場はほとんどないと言っても良いだろう。

目視で確認できるのはせいぜい0.5t単位、しかも既述の通り誤差がつきものである。飼料会社の熟練した配送担当者でも100㎏より細かく目算することは難しいというから、現場担当者では正確にかつリアルタイムで飼料消費量を把握することは不可能に近いのだ。

しかし、これでは生産現場で苦労して改善しているはずの飼料要求率も、0.1や0.2くらいはすぐに変化してしまう。飼料が安いうちはこれも「誤差」で済んだが、8ドル/ブッシェルが続くとなると0.1の差で何百万、何千万という差額が出ることになる。生産コストの6割を占める飼料費の管理がこれでは、あまりにずさんと言わざるを得ないのではないか。

99.9%以上の精度で使用量の表示

そこでより正確な飼料使用量の把握を目的とし、今回スワインジェネティクス㈱と愛知県の種豚場・チロルブリード㈱では、アメリカ・HerdStar社のタンク計量器「BINTRAC」を輸入し共同試験を開始した。

「BINTRAC」のシステムは至ってシンプルで、タンクの脚すべてにロードセルを1台ずつ設置し、その4台の測定値を平均化してインジケーターに表示するというもの。インジケーター1台でタンク4本をモニターでき、表示はポンドと㎏を選択可能。最初にタンク容量を設定すると、数値とともにタンクのイラストにもランプで残量が表示される。

ロードセルはアメリカの20tタンクなどの角脚対応だったものを、日本の丸脚タンクでも安全に使用できるように独自に改良を行った。試験では誤差3㎏程度と99.9%以上の計量精度となっている。

これまでもタンク計量器は日本で紹介されてきたが、銭単位でコストを管理しなければならない採卵鶏、ブロイラー農場で一部採用されたものの、設置費用が高い上にメンテナンスが煩雑で導入が進まなかった。「BINTRAC」は複雑な計算などはできないが、その分システムをシンプルにしたため設置やメンテナンスが容易で、価格を大幅に抑えることができている。ロードセルを平衡に設置するため、コンクリートで頑強な基礎を作る必要があることとタンクの脚に若干の加工が必要ではあるが、それでもタンク4本当たりの設置コストは従来品の半額程度で済む。

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怖いのは落雷だが、ロードセルとインジケーターの間にある集積器の損傷のみで済むよう対策しているので、データを記録しているインジケーターが傷つくことはない。
正確に測れるばかりでなく、タンクに登らずとも詳細な残量が把握できることから、タンクからの落下事故を無くすことができるという安全性もメリットとして大きいだろう。
現在行っている試験では「BINTRAC」の機能を利用して、飼料納品時の重量をチェックし記録を行うほか、豚舎への移動、死亡、出荷など在庫頭数と併せてデータを組み合わせることでより短い期間での飼料要求率の把握、コスト管理に努めている。また、チロルブリード㈱は種豚場であることから、すでに個体管理を行っているため、今後はこれらのデータを利用し、体重100㎏到達時の日齢、その豚群の飼料要求率などを計算し、種豚の改良、顧客への情報提供にも役立てていく予定である。

正確な生産コスト計算で賢明な経営へ

設置に当たって唯一障害となるのが、飼料メーカーやタンク設置業者との兼ね合いである。日本では、タンクは飼料メーカーが設置し、それを生産者にリースで貸し出すという方式が一般的である。つまり、すでにあるタンクに「BINTRAC」を設置しようとすると、その持ち主である飼料メーカーに断わりを入れる必要が生じる。今回の試験に当たっても、飼料メーカー、タンク業者の両方から「何かあったときの責任は取れない」と嫌がられたが、私が責任を持つことにして加工や設置を承諾してもらった。納品した飼料の重量が計られるのは、飼料メーカーにとって苦々しいことだろう。しかし、これからの時代、より正確なコスト管理を行う必要があるなかでは、農場自身の責任のもとにタンクを設置するくらいの覚悟は必要なことだと感じる。

飼料コストの削減というと、グレードの低い飼料に切り替えるという農場も多いが、安かろう悪かろうの飼料で急場しのぎするだけでは、良い畜産物をつくることができず、これから生き残っていくことは出来ないだろう。「BINTRAC」のような資材を使って正確なコストを把握するだけで、まだ多くの無駄をカットすることが出来る。的確な投資と判断で、賢明な経営を行っていきたいものだ。

畜産の総合情報誌 「月刊畜産コンサルタント」 2012年10月号掲載